天童荒太「ペインレス」上・下

書店で買うのが憚られてAmazonにて購入。
「医師として診察したいんです。あなたのセックスを―。」
そんな帯をつけられた日には。


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生まれながらに心に痛みを感じないペインクリニックに勤務する麻酔科医の万浬。


かつてセックスの中で与えられた痛みを死ぬ前にもう一度味わいたいという末期がんの患者・曽根。


テロに巻き込まれ大怪我をしたのち、体の痛みを感じなくなった森悟。


彼らは出会い、壮絶な過去が打ち明けられていく…



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痛そうで読み飛ばしてしまうところもありつつ、官能的。

ただセックスの時に物凄い喋っているけど…
診察だからそんなもんなのか…


そして、ものすごくくだらないことを書きます。
私が常々思っていたこと。
パンティって言葉は女の人は使う人ほとんどいないと思います。
少なくとも30代以下は使わないはず。
パンティストッキングも言いません。
ストッキングですね。
パンティと書かれているのを見るとちょっと面白くなってしまう。
ショーツとかにしませんか。



脱線しましたが、

主人公は万浬ですが、心に痛みを感じないという設定だけあって彼女は他人に共感しないし、作品内ではモンスターと表現されているけれどサイコパスってやつでしょうか。
そしてそれは、読み手である私も万浬に共感をしないということでした。

イカレた美女と、彼女にずたぼろにされていく周囲の人たち。
ずたぼろにされながらも、彼女を愛し続ける人、離れていく人、憎む人…

万浬は変わらない。
動じない。
動けない。
変わっていけるのは、動いていけるのは、痛みを知る人たちだけなんじゃないかって気がしてしまいました。


万浬は本当に人類の新しいモデルで、希望なのかもしれないけれど、
どうしても空虚で、
彼女は物語の主人公にはなれないんだな、って思ってしまった。


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装丁はクリムト
上巻は『水蛇Ⅱ』、下巻のは「ベートーベン・フリーズ『敵対する力』」。
学生の頃卒論がクリムトだった友人がいて、その影響でちょろっとしかわからないのですが、クリムトはエロスとタナトスなのだと言ってしましたね。

さて、『水蛇Ⅱ』はレズビアンをモチーフにしてるやつ。
では『敵対する力』って何を描いているのか。

表紙になっている女性は淫欲を擬人化したものだそうです。
で、これは横に長い絵になっていて、表紙には入っていないけれど右の方には「我々の心を蝕む悲しみ」を表した女性が描かれているんですね。



やはり上巻・下巻とも表紙の女性は万浬のイメージ。
『敵対する力』には「我々の心を蝕む悲しみ」を象徴した女性が描かれているけれど、それは選ばれてはいない、ということ。
ペインレスってことでしょうか。
万浬が悲しみ、心の痛みを感じない、ということがここでもなんとなく伝わってきます。

…しかしさらに絵の左の方にはゴルゴン3姉妹や病気・狂気・死を象徴した女も描かれているんで、今まで書いたのはこじつけです。



きちんと勉強すればもっともらしい深読みができそうな気がしています。

歓喜の仔」と言い、天童さんはベートーベンがお好きなのでしょうか。